板橋区私立保育園園長会
下竹 敬史
今からさかのぼること12年、平成15年7月に次世代育成支援対策推進法が制定され、これに伴って各区市町村においては、次世代育成支援行動計画の策定が義務付けられた。板橋区においてもその策定のために、平成16年3月、板橋区次世代育成推進行動計画策定協議会が設置され、板橋区における次世代育成支援のあり方について、審議が開始された。この協議会には、板橋区私立保育園園長会の代表も参加し、積極的な関わりを持ってきた。その結果、板橋区としては初めての総合的な子どもと子育てを支援する計画である「次世代育成推進行動計画」が、平成17年3月に策定されることとなった。
これを受け、板橋区私立保育園園長会においても、自らの役割についての中長期計画策定の気運が高まっていった。当時の社会情勢を顧みると、団塊世代の大量退職、少子高齢化、子どもが被害を受けたり加害者になったり(例えば酒鬼薔薇事件)という現象、子育て世代の不安の増加、公立保育園や学童保育の民間委託、さらに保育園運営における東京都の補助金が板橋区を経由して支弁されるようになったこと云々、ということが想起される。
と同時に、板橋区私立保育園園長会内部においても、社会情勢を踏まえ、組織改革が話題となっていた時期であり、組織外部への情報発信機能強化のため、広報部が新設された。これにより、広く対外的に、板橋区の私立認可保育園は子どものことをこのように考えているのだということを、積極的にアピールし始めることとなった。そしてその成果のひとつが、平成19年6月に発行された板橋区私立保育園園長会自らの行動指針である「こどもと社会の未来を育む認可保育園~認可保育園の役割と今後の展望」であった。
作成にあたり園長会ではプロジェクトチームを設置し、半年にわたり集中的に会議を重ね、検討を加えていった。その途中で、基本的に会員園長が多忙であり、時間的な制約も重なったので、検討された内容の取りまとめはコンサルティンダ会社にお願いし、発行を急ぐこととなった。その結果、前記の通り、平成19年6月に完成、発行され、同時期に発足した東京都民間保育園協会の全会員保育園、板橋区長、板橋区議会議員、板橋選出国会議員、東京都知事、東京都議会議員、各区市町村の保育担当部署等に配布し、板橋区の私立認可保育園としての考え方を広域的に発信した。
以上のような経緯で発行された板橋区私立保育園園長会としての行動指針「こどもと社会の未来を育む認可保育園~認可保育園の役割と今後の展望」であるが、その後、園長会本体および各会員園において実施された内容について、「長期計画(5年~7年)」の最終年度である、平成26年度末を控え、ここにまとめて総括、実施報告を行うものである。
「こども」を中心に「保護者」「地域」「保育園」がそれぞれ役割を果たし協力し合って子育てを行う環境をめざします。
以上のような基本理念のもと、板橋区私立保育園園長会として認可保育園の役割と機能について確認しあい、目指すべき子育て環境を明確にし、現状課題を把握して行動計画を作成、実践してきた。また、園長会として活動すると同時に、各園においてもそれぞれに活動をおこなってきた。その過程と結果は充分なものであったか、成果はあったのか等々を考えながら、これまでの活動を総括してみた。
研修部により職員向け研修を保育士だけでなく、看護師、調理職員も対象に年4~5回開催するとともに板橋区と連携し区職員向けの研修に私立職員も参加し職員のスキルアップを図ってきた。
会員園で全保護者個別面談や育児相談を実施してきた。
管外視察研修において自然の中で特色ある保育を実施している施設を見学し会員園での保育の参考としてきた。
調査研究部によりこどもの身体や連動機能についての情報提供をおこなってきた。
会員園の多くで園外保育、自然の中でお泊まり保育、農園活動、定期的な体育指導等を取りいれてきた。
Webサイト「板橋区内保育園パーフェクトデータ」により区内全ての保育施設の紹介、緊急連絡機能、求人機能、また、医師会との協力による登園許可証サービス等をおこなってきた。
広報部を設け、ロゴマークを作成し、板橋区民まつりにおいて園長会の広報をおこなうとともに育児・入園相談を受け付けた。
東京都民間保育園協会に先駆けて認可保育園ゴミ拾い連動を展開し、会員園において年長児による地域のゴミ拾いをおこない地域貢献してきた。
会員園で積極的に小中学生の育児体験の受入、出前保育、育児講座、子育て情報誌の発行、園開放等をおこなってきた。
板橋区選出衆議院議員(現在、文部科学大臣)をはじめ板橋区長・区議会各会派・区役所所管課との懇談会を定期的におこなうとともに区長・議会に対して保育関係予算要望書を毎年提出し保育水準の向上に努めてきた。
子ども子育て会議、要保護児童対策協議会、交通安全協議会、民生委員推薦会等、区内各協議会に委員を出し区内関係機関とのネットワークを構築してきた。
会員から東京都社会福祉協議会、東京都民間保育園協会等に役員を出し、東京都の保育行政とのネットワークを構築してきた。
会員各園で近隣小中学校と連携し、職場体験、行事参加等を実施している。町会とも連携してお祭り等へ参加し、地域の子ども達との交流を深めた。
会員各園において地域の子育て家庭への子育て相談を受け入れた。また、毎年開催される「いたばし区民まつり」において、ブースを設置し、育児相談、入園相談をおこなった。
園長会としてはたらきかけ、会員園において親の1日保育士体験、育児講座、給食試食会等をおこなったり、子育て情報誌を発行し親への啓蒙活動とした。
会員園において父母の会やおやじの会活動を促進したり、保護者懇親会を実施したりして親同士の繋がりを強化した。
会員園において園庭開放を中心とした地域子育て支援をおこない、未就園児の子育て家庭の孤立化を防いだ。
会員園において親子遠足、保育参加、土曜日や日曜日の夏祭り等、保護者参加の活動をおこない親子同士での交流を促進した。
園長研修において会員園の労働環境について事例発表し意見交換をおこなった。また、園長・リーダー層向けの研修として「コーチング」「メンタルヘルス」について学び各園の労働環境整備の一助とした。
以上、板橋区私立保育園園長会としての行動計画に関する活動を、中期計画、長期計画それぞれについて、簡略化したかたちで実践報告をおこなった。記載の事項以外にも、各地域単位でおこなっている合同運動会等、様々な取り組みを、会員園の連携の中でおこなってきた。近年では、各会員園の5歳児を800人以上集めて、「板橋こどもシアター」(観劇会)を毎年、主催するなど、園長会としての実力、相互協力関係が大きく伸展している。また、各会員園で人材確保の問題が生じているという現状を踏まえて、「就職フェア」を開催し、60名ほどの学生を集め、各園の求人活動に資するという、的確に現状に対応するフットワークの軽さも持っていると自負している。
この板橋区私立保育園園長会としての行動指針を作成した7年前の会員園数は45園であったが、現在は57園に増え、来年度には、さらに7園が新規加入する。また、板橋区の私立保育園園長会では、認可園でまとまるという考え方のもと、当初より、株式会社立をはじめとするすべての経営主体に門戸を開いてきた。今回、偶然ではあるが、子ども・子育て支援新制度の実施を前に、すべての会員園が協力し合って、この園長会としてのまとめを作成することができた。今後はまた、園長会としての新たな中長期計画を作成し、新たな制度の下で、さらに地域に根ざした活動を継続していきたいと願っている。
最後になるが、今回、このまとめを作成するにあたって、改めて板橋区私立保育園園長会の歴史を振り返るときに、板橋区の行政関係、議会関係などの関係各位各機関、また、保育・社会福祉関係諸団体、さらに区外の多くの保育所等の交わりや協力関係の中で、私たちの園長会が支えられてきたということを強く思う。この場をかりて、感謝の意を表し、私たちの活動の実践報告を総括する。
2015年